今月の釈迦説法
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今月の釈迦説法

釈迦が菩提樹の下で悟り、説いた教えとは中道(ちゅうどう)、縁起(えんぎ)、四聖諦(ししょうたい)、八正道(はっしょうどう) の四つの真理から成り立っています。
これらの修行を積むことによって煩悩をなくし、結果として苦を克服することができるとされています。

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2015年12月

「生・老・病・死」の教え

人間は誰でも老い、病の床につく

仏教とは、仏さまにお参りすれば、病気にならないというような調子のいいことを説く教えでは

ありません。それどころか、人間はどれほどいやがろうが、避けようが、必ず、老・病・死とい

う現実にぶつかるということを明らかにし、その厳粛な現実を踏まえて生きる道を明らかにす

るのが仏教です。みなさんもご承知のように、お釈迦さまの出家の動機は、老・病・死の現実

を見られたことです。

すなわち、十四歳のとき、東の城門を出ると老人に会い、南の門出ると病人に会い、西の門

を出ると死人の屍を見られたことが、お釈迦さまの出家の動機です。

親鸞聖人が、私たちのすくわれる道を明らかにしてくださった唯一の教えとよろこばれた

『仏説無量寿経』(ぶっせつむりょうじゅきょう)にも、老・病・死を見て世の非常を悟り、

国と財と位とを棄て山に入りて道を学す。と述べられています。

このように病気は、仏教において、老や死とともに、その出発点から大きく問題になって

いました。しかし、だからといって仏教は、初めに申しましたように、病気にならない方法

とか、不老長寿の法として求められたものではありません。それでは、どうしてお釈迦さま

は、老・病・死を見て、妻子・地位・財産のすべてを捨てて出家されたのでしょう。人間が

老いることを知らない人はいませんし、人間が長い人生の間に、病の床につくことのある

ことを知らない人もいません。いわんや、人間が死ぬことを知らない人は一人もいないで

しょう。

私たちは、老・病・死を当たり前と受けとり、さほど驚くことはないと思っていますし、

決して、老・病・死を見ても非常(ただごとではない)などと考えもしません。老・病・死を

見て、お釈迦さまは何を思い、何を感じられたのでしょうか?

私たちは、いつのまにか、他の人は信用できなくても自分だけは確かであるという思いを

もって生活しています。

それほどひどい他の人の裏切りに出会わなくとも、私たちは何となく、他の人が信用でき

ないという気持ちをどこかに持ち、結局、信用できるのは、自分一人であるというような思

いを持っているのではないでしょうか?

老・病・死とは、その信用できると思っているものがあてにならない ― 言葉を換えれば

― 「確かだと思っている自分というものも、あまりあてにはなりませんよ。

決して確かなものではありませんよ」ということの指摘なのです。老・病・死によって、確か

だと思っていた自分自身すら、当てにならない、不確かなものであったと知らされたお釈

迦さまは、足もとが音を立てて崩れていくのを感じられ、愕然とされたのでしょう。

私たちは、自分が確かだと思うとき、知らず知らずのうちに、自分の「若さ」を力にしてい

ます。

「私は若い。他の人の世話にならなくても、この若さがあれば、私は一人で生きていくこと

ができる」と、自らの若さを誇り、若さを力にし、若さを踏まえて自分の人生を築いていこ

うとします。

老とは、その自ら誇り、力とし踏まえている若さが「当てにならないものですよ」という指摘

であります。老とは、若さの崩壊していく足音のことです。老は、小刻みに私の若さを蝕

むのではありません。ガラガラと大音を立てて、若さを壊していくのが老いであります。

今まで、何の気なしに跨いでいた溝が跨げなくなっている自分自身に気づくとき、

若さがガラガラと崩れていく音を聞かないわけにはいきません。

私たちの踏まえている「若さ」という地盤が、音を立てて崩れているのです。このことを知

られたとき、お釈迦さまは、愕然とせずにはおられなかったのでしょう。「若さ」の崩れてい

くのに気づくとき、私たちは、すばやく「もう若くはないが、私はこのように健康だ」と、

「健康」を確かなものと、足の踏み場を「若さ」から「健康」に変えます。そして、「私はこの

通り、元気だ。他の人の世話にならなくとも・・・・」と、自らの健康を確かなものとし、力と

してこの人生を生きようとします。

病とは、「あなたが確かなものだと思い、力にしている健康が本当は当てにならないもの

ですよ」という指摘です。病とは、健康の崩壊していく姿であります。

元気だから、健康だからと、元気にまかせ、健康にまかせて生きていますが「その元気も、

健康も、確かなものではないのですよ」と教えてくれるものが病気です。

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