今月の釈迦説法
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今月の釈迦説法

釈迦が菩提樹の下で悟り、説いた教えとは中道(ちゅうどう)、縁起(えんぎ)、四聖諦(ししょうたい)、八正道(はっしょうどう) の四つの真理から成り立っています。
これらの修行を積むことによって煩悩をなくし、結果として苦を克服することができるとされています。

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2021年5月

人生はわからない

人生が行き詰るのではない

自分の思いが行き詰るのだ

 

敬覚寺(東京)

 

これは東京都台東区浅草のお寺の標語で、安田理深師(一九〇〇~八二)の言葉です。安田理深

師は高名な仏教学者で、真宗大谷派の僧侶でした。

人生は「諸行無常」の言葉どおり、それ自体は淡々と流れていくものです。しかし、私たちはさ

まざまな思い込みを持つことによって、人生の歩みを困難なものにしてしまっています。

目の前に起こることすべてをあるがままに受け入れることができれば良いのですが、そうするこ

とがなかなかできず、思いが行き詰まってしまうのです。

安田理深師の自宅が火事にあった時のエピソードを以前聞いたことがあります。隣家から延焼し

て、学者の命ともいうべき重要な蔵書やノート類がすべて焼けてしまったそうです。普通の人間

であれば計り知れないほど大きなショックを受けるでしょう。

しかし、安田師はこのように語ったといわれています。

 

「焼かれた」のでもない。「焼いた」のでもない。

ただ「焼けた」と。そうすると事実を事実のまま受けていけるのではないか。

自も他も損なわんで済む。こんなことを今度の火事で学びました。

 

火災を他人のせいにして他者を恨むのではなく、自分のせいにして自身を責めるのでもない。

目の前に起こった事実を事実のままに受け止めることができれば、確かに自分も他者も損なわれ

ません。しかし、私たちはある出来事に対するショックが大きければ大きいときほど、それによ

って自分や他者を損なうような思いにずっと引きずられてしまい、その苦しみから離れることが

難しくなります。仏教に触れたからと言って、都合よく生きられるわけでは決してありません。

好むと好まざるとにかかわらず、生きているとさまざまな災いが必ず降りかかってきます。

先ほどの火災のエピソードの中で、安田師は最後に「学びました」とおっしゃいました。「学ん

だ」ということは、おそらく火災直後は少なからずショックを受け、心の中に葛藤があったのだ

と思います。高僧であっても人間ですから、災難の直後にそれらから逃れられないのは当然のこ

とです。目の前で起きた辛い出来事を「師」として、そこから学びや対応の仕方を与えてくれる

のが仏教なのです。パナソニック創業者の松下幸之助さんは『道をひらく』(PHP研究所)とい

う本の中で以下のように述べています。

 

いくつになってもわからないのが人生というものである。

世の中というものである。それなら手さぐりで歩むほか道はあるまい。

わからない人生を、わかったようなつもりで歩むことほど危険なことはない。

 

この世界に生きていると、葛藤や不安が完全におさまることはありませんし、いくつになって人

生のすべてを理解することはできません。

災いや不安・葛藤を前にした時、命ある限り仏教にヒントを求めて、謙虚に学びながら人生を歩

む姿勢が重要なのではないでしょうか。

 

補足

「難」があれば「苦難の人生」「難」がなければ「無難な人生」「難」あればこそ。

というように私たちの人生には、山あり谷あり色々な道があります。その中で三つの坂道がある

と言われています。一つ目は「上り坂」という坂道。二つ目は「下り坂」という坂道。

もちろん平坦な道もありましょうし、時には曲がりくねった道もあることでしょう。

人生という道を歩んでると、良い事(幸せな事や楽しい事)ばかりではありません。

悲しい事や辛い事、腹立たしい事や時に自暴自棄になりそうな事など様々の事が起こります。

色々な事が巡り巡っていくのが時間であり、それと共に心の成長もあります。

それこそが私たちの人生という道ではないでしょうか。そして三つ目は「ま坂」(まさか)とい

う坂道です。このま坂(まさか)という坂道はいつどこで誰がどのようなまさかが起こるか想像

もつきません。そして避けて通ることも出来ません。

人生の「まさか」に出くわした時にこそ今までの歩みが問われてくることでしょう。

そのように考えると「難」は私たちの人生を育んでくれる大切なものであります。人生を歩むと

同時に「いのち」も歩んでいる私。いのちの教え(仏教)を糧にする生き方が現代人の心の支え

になるのではないでしょうか。

 

 

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